
お写真はゲネ風景。
15時公開審査開始。劇小劇場の舞台に11人の審査員が並ぶ。
審査形式は劇作家協会の新人賞と同じ。一作品ずつ審査員全員の批評があった後、一名につき二票づつ投票を行います。
11人の専門家による11パターンの批評。
これを貰うためにはるばる海越えてきました。
取りこぼさないようにノートに全部書き込みながら聞く。
今回のお芝居を簡単に説明しますね。
古事記の物語の中から「イザナキとイザナミ」のお話を原作のエピソードに沿ってひどく簡単なラブストーリーに仕立てました。半身としての異性トイウ神話。やおよろず信仰というのはひどく身近なものを祈ることなんじゃないだろうかとそんなことを思いながら書きました。
ひとつの身体に住む男女神が二つに分かれたところから生じる差異というストーリーをフィクションとして載せています。
物語は一人の役者によって演じられ、もう一人の演奏家が様々な楽器を使って音楽として競演しています。音楽家はBGMを弾くのではなく、時々イザナキという男性のイメージとして舞台に存在し、話しかけられたり言葉のようにイザナミに楽器で語ったりします。役者もまたイザナキと会話するように楽器を演奏します。舞台に存在する楽器とともに布や紙という素材を様々な物に見立てて物語は進行します。
以下はしぐちメモから批評の抜粋です↓
・判りやすく安定している。故に脚本構造の矛盾点が見える。登場人物の理解のIQと台詞のIQが比例していない。こういった作品を目指すならもっとうまく見せてほしいと思う。
・パワー、情念を感じた。
・表現にやわらかさを持っていることに好感を持った。ストーリーは説明的に感じた。いらないと感じる舞台装置もある。視覚に訴えるより「語り」に始終してほしい。
語りかけるもう一人の他者の存在場所が曖昧。誰に対して発信しているのか見えづらい部分があり、結果として「見えないもの」がみえてこない。
・脚本に異論。イザナミとイザナキを一心同体で描くというのは西洋的でその後の展開の間尺に合わなくなる。ストーリーがご都合主義的。
演出は典型的で新しさがない。役者のチカラで見せている。
・非常に判りやすく面白く見た。
・多い、いらない。何も無いところで魅せるドラマを立ち上げたいなら、装置はもっと少なくて良い。エッチなのがいい。
・定期的に活用される仕掛けが、物語に抑揚を与えて飽きさせない。パンフレットに美術家の名前がないが、世界観を持つ美術家と組むことでもっと匂い立つ世界の構築が可能になると思う。女優の力量の大きさを感じる。
・妊娠したイザナミが送風機によって膨らむ演出で「あ!フィリップ・ジャンティだな」と思うほどに拾ってきたルーツが判る。もうすこし噛み砕き進化させて自分の物にしてほしい。演出に新しさがない。
・「走る女」という男を追って走り続けるオムニバスの物語を思い出した。情念や女のパワーがまだ強烈に出れば。
・一人で喋るとき、発言の対象が不明瞭。役者使う声の中で、つらい音域を使用させている部分がある。
・これは一人芝居じゃなく二人芝居。語らないミュージシャンの存在が相手役としてもっとドラマティックになったんじゃないか。
などなど。
脚本に対する批評が必ず出ると思っていた。
古事記は随分政治的な性格を孕んでいるからね。その触れにくい部分を完全に取っ払って恋愛の神話でいいじゃねえかとおもったからね。なんか云われたら「これは演出家のコンクールじゃなかと?」と云おうと思っていたのですが、みなさま「演出家のコンクールだから関係ないかもしれないが」ときちんと仰ったので、何もいえないぞ!かつ基本的な劇構造に対するダメ出しだったのでありがたかった。でも半分は台本に対する批評でした。ごめんなさい。精進します。
しかしね。
「でも面白かった」
とほとんどの方に仰って頂いてうれしかった。
でもね、かんたんでおもしろかったよ
とね。
一回目の投票は番長が9票で一位。7票を獲得した笠井君と二人で、審査委員が一票ずつふたりに入れる二回目の投票。
二回目は番長9票笠井君1票棄権1票。
「圧倒的だったんじゃなく無難なものが選ばれたんだよ」とも云われた。
でも
「かんたんでおもしろいよね」という作品が支持されたことに、初めて
「勝ったんだ」
と思った。
現代の病理を描くには私は疎ましいほどに健康だ。現代を切り取るより1000年後の人間も理解できる物を書きたいと思っている。複雑さには臨界点があると思っている。単純さは永遠だと思っている。北海道には突き抜けてゆく空も見渡す限りの大地もある。一時間、その一時間をお金を払ってくれるお客さんが飽きないようにとそればかり考えた。無彩色ではない、私が住む世界は極彩色だ。
病巣を描きたくはない。お粥になりたいと心から思っていた。
愚鈍と言われてもかんたんでわかりやすいものを、やわらかいものをつくりたいと。
「おもしろかったよ」という簡単が勝利したことがひどくありがたかった。
役者のチカラを評価されたこともありがたかった。「演出力なのか役者力なのか考えた」と言われたそれを10年かけて一緒に造ってきたのだもの。村上、素子との10年を、柴田との6年を、これから作り上げてゆく櫻井、能代、赤沼、菊沢の10年をなんだか抱きしめた。
音楽を評価されたことも。デジタルに変換された音楽から抜け出し、ライブの、アコースティックの音楽のデジタルじゃとっても届かない情報量と「それを人間が造っている」という当たり前のことを教えてくれたのは岳郎さんだ。45才という人間の存在感を舞台に置いてくれた。
はてさて、最優秀賞と共に観客賞も頂きました。観客賞はお客さんに「面白かったよ」と云ってもらえたで賞です。
いちばんうれしいね。
公開審査と千年王國の作品について、演出家協会理事の流山児さん日記にちょっぴ書いて頂いてます。あわせてどーぞ↓
http://www.ryuzanji.com/r-shownikki.htm